COLUMN

2020年6月19日

レーシングカーの画像トリミング

仕事上、画像のトリミングは日常茶飯事です。
大体は何かの写真を切り抜いて、合成してイメージビジュアルを作るというものが多いのですが、そこで一つ車の写真処理には拘りを持っています。

合成用の画像トリミングというと一般的には後から編集しやすいように「マスク処理」といって余分な部分消して行くのではなく、データー上でパスで切り抜いて見えなくしていく手法が多いかもしれません。
置き撮りの製品とか人物とかもパスで抜く場合もあり、そのつもりでクロマキー撮影されていればまだ良いのですが風景と同化している所から抜くとかはかなり大変だったりします。自分の仕事ではスタジオ撮影された物など殆どありませんし、クロマキーなんて皆無ですべて屋外撮影された写真から起こします。

今は切り抜き専門の業者もあってデータを送れば数時間で切り抜いてくれるサービスもあるのですが、特にレーシングカー、それもフォーミュラマシンのような複雑な構成だと特にフロントのサスペンションアームや空力パーツが複雑なので、オペレーターの方では部品なのか風景なのか分からず「ぱつ」と切れて返って来たりもして困ることもあり、特に走行写真などは依頼できません。(それほど作業代金は高額ではないのでお願い出来れば楽なんですけどね・・)
他にもアンテナやらピトー管やら細かい部品もありますし、低解像度の素材とかだと判別できないことも多々あり自分も怪しい時は他の角度の写真と比べたり、それでも怪しい時は雑誌はもちろん、予選の写真だからここのパーツはないはず、レインセットだからこうなっているだろうとか、ビジュアル以外の情報からヒントを探ったりとCG処理以外にずいぶんと時間を費やすこともあります。
最終的に合成したら分からなくなっちゃうこともざらにありますけど・・・

あと処理方法として自分の場合、走行写真はマスク処理(ベクトル処理)ではなく、いわゆる「消しゴム」で余白を消していくようにしています。(最終的な目的や元素材の解像度にもよりますが)
その理由は、マスクで抜くとデータ数値上で処理されるので「スパっ」と切れます。これはこれで切れ目がシャープでキレイに見せられるのでもちろん使う時はありますが、とかく走行している車(動いている物)はもちろん静止している訳ではないのでシャープなラインが逆に違和感を感じる場合もあるからです。
現実的にも動いているのですから人間の目にはブラー(残像)が無意識の内にあるはずですし、路面を走っていて空気抵抗もあれば少なからず振動もしています。これをピタッとさせるということは、真空で鏡のような路面を完全に硬化した物質で出来たタイヤで走り、かつエンジンも振動していない状態と同じことだと思います。

039_2.jpgつまり前に走っているだけではなく、ずっと振動もしていて"揺らいでいる"のがリアルな表現だと思うので自分の場合はあえて「ジャギー」を活かして自然な処理にするために「消しゴム」で少しずつ消すというより削っています。また、その揺れ幅も部品の種類によって異なる(はず)ので例えばタイヤや薄いウイングなどは大きく薄めに、逆に硬いところはシャープ目にとかもちろん正解はありませんが処理を使い分けています。

たまに静止した車のタイヤをCG処理で回っているように合成して走行している風に見せて・・・なんてのもありますが、それはそれで違う処理でなるべく違和感を緩和させて落としどころを見つけますが・・・

そこまで時間かけて処理しても最終的に名刺くらいの小さい物だったり、遠くの大型看板だったりして報われない場合も多々ありますがそれでも一つの拘りとして、撮影されたカメラマンや被写体に敬意を払う意味でもコツコツと手を抜かずに日々作業をさせていただいております。

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  2020/06/19   ABOVE